「多世代交流モール整備工事設計競技」募集要項

「多世代交流モール整備工事設計競技」募集要項

~木藤亮太(テナントミックスサポートマネージャー)からみなさまへ~

全国から注目される“商店街再生”のまち油津

宮崎県日南市の油津(あぶらつ)は、かつて「東洋一のマグロ基地」として、そして堀川運河を中心に林業(飫肥杉)で栄えた港町です。商店街は30~40年前は歩くと肩がぶつかるほどでしたが今はその影すらなく、現在はいわゆる地方のシャッター商店街。その再生へ向けて秘策として日南市が打ち出した施策とは・・。

日南市は「4年で20店舗誘致」、「月額90万円で人材募集」というキャッチーなフレーズでその人材を全国から公募しました。その名も「テナントミックスサポートマネージャー(通称サポマネ)」。応募者は予想をはるかに上回る333人。商店街で行われた公開プレゼンテーションでは市内外から来た会場に入りきれないほどのオーディエンスに見守られながら、私が選ばれました。

http://www.the-miyanichi.co.jp/hito/item_530.html(宮崎日日新聞/2013年6月18日)

私が掲げているテーマは「自走できる商店街づくり」。「4年で20店舗」は一つの数値目標でしかない。4年後をスタート地点として、商店街が持続的に歩める状況をつくることが最大のミッションだと常に発信しています。

いわゆるまちづくりコンサルタントを名乗る業者として、「外部からまちづくりに関わること」の限界を感じていた私は、「日南市へ必ず移住する」という日南市の公募条件を見て新たなワークスタイルへの可能性を強く感じました。この熱い思いが今の私を動かしています。コミュニケーションがなくなった商店街の中で、私は一住民としての顔と専門家としての顔を持ちながら、密度の高いコミュニケーションを実践していく。これが可能なのが私の今の強みであり、着任当初から最も心がけて取り組んでいることです。

かつてないスピードで、確実に前進する“商店街再生”

着任1ヶ月後の2013年8月、コミュニケーション再生には「場」が必要と、空き店舗にカフェスペース「Yotten」をオープンしました。これをきっかけに高校生から70代まで多世代の市民が集う、商店街応援団「KITOTICKET」が結成されます。商店主たちとの意見交換はもちろん、「油津オクサマ会議」で母親世代のニーズを聞き取るなど、徹底して腹を割ったコミュニケーションを繰り返しています。

  • Yotten
  • KITOTICKET会議

http://www.asahi.com/articles/ASG5X5VLFG5XTNAB00Y.html(朝日新聞/2014年6月6日)

これらの対話の中で次々とアイデアが生まれ始めます。フリマ、パブリックビューイング、運動会、商店街に50mのレーンをつくったボウリングなど、「商店街を長い広場と見立てる」という発想でイベントを次々に開催します。アパレル、美容師、カメラマン、高校生DJなどそれぞれの興味や職能をつないで実現した商店街ディスコやファッションショー、クリスマスライヴなどには多くの若者が訪れ、メディアを賑わせました。

空き地を使った「アーケード農園」には親子が集い、商店街に「何か面白そうなことをやっている」という空気感や足を運んでみようという興味が溢れてきました。
着任後9ヶ月、進捗が遅いという意見もある中で第一店舗目がオープン。

  • アーケードボウリング
  • ファッションショー

“商店街再生”のために生まれた全く新しい発想のカフェ

商店街再生のプロセスにおいて、重視しているのが「市民がついつい巻き込まれてしまうストーリー」です。その第一弾がカフェの再生でした。市民の思い出がたくさんつまった喫茶店「麦藁帽子」。改装前の「思い出を語る会」へは多くの市民が参加しました。その後リノベーションによって再生された「ABURATSU COFFEE(アブラツコーヒー)」は、商店街の一角は、かつての集いの場を懐かしむ世代、パンケーキとラテとおしゃべりを楽しむ若者でいつも賑わっています。まちのストーリーを伝えるコミュニティ・カフェによって、物語が本格的に動き出しました。

「ABURATSU COFFEE」の運営体制は、商店街自走のための組織づくりへとつながりました。サポマネ審査員の一人で商売のプロ村岡浩司氏(有限会社一平・宮崎市)、地元商業者に多くの人脈を持つ黒田泰裕氏(日南商工会議所)と共同出資により『株式会社油津応援団』を3月に設立しました。この会社は、サポマネの動きを支え、任期終了後も商店街を持続的にマネジメントしていく完全民間の組織です。着任1年目で行ってきた下地づくりとして、最も大きな成果。現在は7名の雇用を生んでいます。

  • ABURATSU COFFEE
  • 会社設立記者会見

「多世代交流モール(仮称)」は“商店街再生”の切り札

これまで約1年半、商店街に色んな変化が生まれました。しかし、現実は甘くなく、まだ人通りはまばらです。YottenやABURATSU COFFEEは集客の起点となっているものの、もちろん十分ではありません。
 そこで、次の一手として、計画されたのが「多世代交流」をテーマとした交流と消費の核づくりである「多世代交流モール(仮称)」です。もともと計画されていた複数の施設・機能をコンパクトに集約し、株式会社油津応援団による民間主導の事業として実施。約800㎡のスーパー跡の巨大空き店舗や空き地を活用し、農園や飫肥杉屋台、コンテナテナント、ミニ劇場や半屋外の広場など、これまでの商店街でリサーチしてきた市民ニーズに細かく応える内容です。

店舗の誘致は単にシャッターを開けて商売を挿入するだけではなく、隣り合う店舗同士が連携して集客力を高める協働の意識、それを育むチームづくりが重要です。この次の一手は、その動きを加速するものになります。「多世代交流モール(仮称)」はこれまでにない再生に挑む“油津商店街再生の切り札”です。ぜひとも注目していただき、みなさまの技術力、デザイン力、企画力を注いでくだされば幸いです。

日本で一番熱い“商店街再生”に建築家として参加しませんか?

宮崎県日南市は、九州最年少の市長崎田恭平氏(35歳)を核に、サポマネ木藤、株式会社油津応援団、他にも飫肥杉デザイン製品の世界進出、若手生産者の台頭など、日本でも有数の元気あふれる地方都市です。そんな動きに、大人だけでなく、子供たちが熱く反応してくれています。市内の中高生が自ら空き店舗を活用した夏祭りでは、カフェやお化け屋敷を企画し、大人顔負けの売上げでした。市が主催する「子ども議会」では、多くの商店街再生に対する質問が寄せられ、ついには、小学4年生の女の子たちから私宛に自主的に作成した活性化企画ノートが手元に届くなど、大人(関係者)だけでなく、本当に市民一丸となった非常に嬉しい動きが起きています。他にも東京で暮らす日南市出身者から、まちづくりへの参画申し出があったり、Uターンの相談があったりと、単なるまちづくり事業の枠を超えて、人の動きとして反応が生まれ始めています。

この「多世代交流モール(仮称)」を、全国の建築家の皆様のご協力をいただき、油津らしい、デザイン性の高い、魅力ある施設に育て上げ、あせらず、じっくり、でもスピーディに持続可能な、自走できる商店街づくりを進めていきたいと考えています。ぜひとも、ご応募ください。皆様からのご提案をお待ちしております。

様式